2008年5月27日の放送内容

■本日の話題その1  主要国(G8)環境相会合で決まったこと
 今月24日から26日まで神戸で開かれていた「主要国(G8)環境相会合」では、世界の温室効果ガス排出量を2050年までに半減させる、という議長総括をまとめ閉幕しました。この議長総括では具体的な数値目標が示されなかったこと、目標を具体的に進めるための中期的具体策も示されなかった点について新聞各紙は「会議は成功したとは言えない」「議論は一向に進んでいない」などと論評しています。私もその点については同感ですが、ひとつだけこの会議で評価すべき点がありました。
 それは「生物多様性」について、「人類の安全保障の根源」だとし、国際社会で保全すべきものと位置づけた点です。具体的には森林の減少を地球温暖化との関連性において国際的に違法伐採などを取り締まるべきとしています。具体策として外来種問題に踏み込まなかったことはもの足りないですが、でも、このような各国の大臣クラスの会議において「生物多様性」を維持することの重要性が主張されたことは注目すべき前進だと受け止めました。
 守るべき生物多様性とは「環境の多様性」「生物種の多様性」「遺伝子の多様性」という3つのレベルがあることが叫ばれていますが、今回は「環境の多様性」について、森林についてしか語られなかったことも、残念でした。地球温暖化をはじめとする環境問題の一環として、生物多様性をどう守っていくかということが、これからもっともっと一般市民のレベルにおいても認識を持ち議論されることを期待したいと思います。

じゅんさい沼

写真:阿寒地方の沼。山、森、湿地、水域…。環境な環境があってこそ、多様な生物が生息できる。


■本日の話題その2 北海道のコウモリはようやく研究の初歩段階
 ファウラ2008夏号「北海道学芸員通信」(執筆・近藤憲久)から、北海道のコウモリの話題です。
道東に生息するコウモリ類は13種。そのうち平成10年には12種が絶滅危惧種とされていましたが、平成19年には絶滅危惧はたった3種だけとなりました。コウモリ類が増えて絶滅の危機を脱したのかと言えばそうではなく、ここ10年ほどの間にコウモリの調査研究が進んだ結果、数少ないと思われていたコウモリがじつはたくさん生息することがわかったということなのです。
 テレメトリー調査といわれる発信機を使った調査の結果、コウモリは樹皮の裏側に多く隠れているという生態の解明も含め、やっとコウモリについてのいろいろなことが解明されつつあるのが現在の状況のようです。
 なぜこんなにコウモリのことが知られなかったのでしょうか。調査が遅れた理由は、まず、分類が難しく、研究者もなかなか手をだせなかったこと。そして、何より、コウモリの調査は夜の山奥で明かりなしで行なわねばならないことが原因でしょう。信念がなければやっていられない仕事であると近藤さんは述べています。得体の知れない物音と鳴き声があちこちから聞こえてくる漆黒の森の中。想像するだけでも怖いことです。恐怖と戦いながらの調査研究。それがコウモリの実態を長く閉ざしてきた一番の理由だと私は思います。
 バットディテクターなどという調査機器も普及し、ようやく、コウモリ研究は初歩段階までたどりついたと言われます。今後の進展に期待したいですね。

学芸員通信

faura2008春号「北海道学芸員通信」道東のコウモリ類


■本日の話題その3  5月の森のバードウォッチング
 5月に入って毎週森のバードウォッチングをご紹介していますが、今週は森の中の「藪」を棲みかとする鳥のご紹介です。
 藪の鳥といえばウグイスが代表的存在ですが、今週ご紹介するのはコルリとコマドリという2種類のツグミ科の鳥。いずれもL=14cmですからスズメとほぼ同じくらいの大きさの、小型ツグミ類といわれる仲間です。どちらも林床の笹薮にいる鳥ですが、コルリは明るいイメージの落葉広葉樹林、コマドリは針葉樹を中心とする森に棲みます。コマドリはそういう森の中の、苔むした石がゴロゴロしているような渓流沿いに多い鳥です。
 コルリとコマドリはさえずりが似ていますが、コルリはチッチッチッ…という”前奏”がつくことが特徴。いずれも笹薮から出てきて姿を見せてくれることは少ないのですが、美しい紺色のコルリもオレンジ色のコマドリも、是非実物の姿を見ていただきたい可憐な小鳥です。
 なお、コルリやシメについては、大橋弘一著「鳥の名前」(東京書籍)「日本野鳥写真大全」(クレオ)などをご参照ください。

■ インフォメーション
・ 大橋弘一が編集長を務める北海道自然雑誌「ファウラ」2008春号(特集:スミレの魅力)は、ただいま道内の書店などで発売中です。
・ ファウラ編集発売元である大橋弘一写真事務所「ナチュラリー」へのお問い合わせは、
0120-4646-13までどうぞ。
・ 大橋弘一写真展「クマゲラ棲む藻岩山」は7/13まで、もいわ山山頂ギャラリーで開催中。
・ 全日空(ANA)機内誌「翼の王国」に、ただいま大橋弘一が「洞爺湖ノート」を短期連載中です。

■ 今日ON AIRした音楽
井上陽水
・ リバーサイドホテル
・ いっそセレナーデ
・ 新しいラプソディー
・ ジェラシー
・ 飾りじゃないのよ涙は



■ 「不思議いっぱいネイチャーワールド」は札幌のコミュニティーFM局「FMアップル」(76.5MHz)で、毎週火曜日午前11時00分からお送りしている1時間番組です。パーソナリティー・福津京子さんを相手に、野鳥写真家であり自然雑誌ファウラ編集長でもある大橋弘一が野鳥や自然の話から地球環境まで、エコについて幅広いテーマでおしゃべりしています。

2008年5月20日の放送内容

■本日の話題その1 エコ野球好発信
 パ・リーグの第1位は日本ハム、第2位はロッテ、第3位はオリックス…。これ、今シーズンから日本プロ野球組織(NPB)が地球温暖化対策として進めている試合時間短縮の現在までの成果順位です。(朝日新聞5/13)
 過去10年間の平均試合時間3時間18分の6%に当たる12分の短縮を目指しているのだそうです。開幕から1ヶ月半経ち、セ・パ両リーグの平均試合時間は3時間7分で、日本ハムは3時間1分、ロッテが3時間3分、オリックス3時間4分と続いています。セ・リーグは1位が広島で2 時間59分。成果は着実に現れています。
  試合時間短縮の具体的方策は、例えば攻守交代は2分15秒、イニング間の投手交代は3分15秒などと具体的目標値を設定し、スコアボードにその時間が表示されるというもの。時間を超えても罰則はないものの、現場の声は「意識せざるをえない」。他に、各球団独自の取り組みとして投手交代のリリーフカーのスピードアップや打者のテーマソングの時間短縮などもあります。
試合時間短縮の効果は、NPBの試算によると1試合あたり12分の短縮で4351KW/hの電力量の節約になり、これはCO2約242キロの削減に相当するといいます。
 あらゆる場面でCO2削減が要求される昨今、プロスポーツ界でも率先して地球温暖化対策を講じるプロ野球の取り組みは歓迎すべきことと思います。もっとも、同新聞によると、米大リーグはもっと先を行っていて攻守交代時間は2分5秒と定められ、平均試合時間は77年以降3時間を超えたことがないそうです。マイナーリーグでは正当な理由なく打者が打席を外しただけストライクを取られるのだそうです。日本のプロ野球がこうした面でもアメリカに追いつき追い越す日が来ることを望むと同時に他のスポーツ界も工夫をこらしてCO2削減に取り組んでもらいたいものだと思います。

■本日の話題その2 ホッキョクグマが北海道に来たことはあるか?
 ファウラ2008春号の連載「ファウラ博物誌」(文・河井大輔)に、かつて北海道と新潟で「白熊」が捕獲された記録について記されています。以下は、この文からの紹介です。
 北海道では「白熊」の捕獲記録が少なくとも5例あり、いずれも献上品とされたといいます。これが北極圏に生息するホッキョクグマだとは考えにくく、いずれもヒグマのアルビノ(白変個体)と思われますが、1891年(明治24年)に宗谷郡猿払村で捕獲された個体は明治天皇への天覧後、上野動物園で飼育されていたものを獣医学者ヤンソンがホッキョクグマであると誤認したことがわかっています。
 しかし、かのシーボルトも、1690年代に越後で捕獲された白熊をホッキョクグマが流氷に乗って漂着したものでろうと推測していたりもするそうです。動物学に造詣の深いドイツ人博物学者シーボルトは当然アルビノの存在を知っており、他所ではツキノワグマのアルビノを「白子」と正確に記録したり、蝦夷地の「白熊」をヒグマなどの白変個体かどうか調査する必要があるとも記録してもいるのに、越後の個体をシグマことホッキョクグマとみなしていることが不可解です。 
 「流氷とともに北極圏から流れ着いた」などという方がロマンに満ちてはいますが、人々のそういう気持ちがただの推測から希望的事実のように語り継がれることとなった原因なのでしょうか。

ファウラ博物誌

faura2008春号「ファウラ博物誌」

■本日の話題その3  5月の森のバードウォッチング
 先週、先々週に続いて、5月の新緑の中でさえずりを楽しむバードウォッチングをご紹介します。
 今週はイカルとシメという2種類のアトリ科の鳥。いずれも太目の体形と大きな嘴が特徴の小鳥です。イカルはL=23、シメはL=18ですからスズメ(L=14.5)と比べると大きな鳥だということがわかります。
 イカルは、明るい森に棲み、キーコーキーという涼しげなさえずりが美しい鳥です。その鳴き声は「月、日、星」とも「お菊、二十四」とも聞きなされてきましたが、番組では実際の鳴き声を録音で流し、本当にその聞きなしのように聞こえるかどうか、パーソナリティーの福津さんにも聞いてもらいました。
 シメは、その名がシッと鳴くメ(小鳥を意味する古語)という成り立ちと言われ、地鳴きの「シッ」「シシッ」という声が独特なことが特徴です。今年は、札幌の大通公園や植物園など、市街中心部でもいまだに(5月半ばになっても)その声を多く聞きます。例年にはなかったことで、なぜ札幌の市街地付近でシメが多いのか、不思議です。
 なお、イカルやシメについては、大橋弘一著「庭で楽しむ野鳥の本」(山と溪谷社)、「鳥の名前」(東京書籍)などをご参照ください。

イカル

イカル(大橋弘一写真集「鳥鳴山河」より


■ インフォメーション
・ 大橋弘一が編集長を務める北海道自然雑誌「ファウラ」2008春号(特集:スミレの魅力)は、ただいま道内の書店などで発売中です。
・ ファウラ編集発売元である大橋弘一写真事務所「ナチュラリー」へのお問い合わせは、
0120-4646-13までどうぞ。
・ 大橋弘一写真展「クマゲラ棲む藻岩山」は7/13まで、もいわ山山頂ギャラリーで開催中。
・ 全日空(ANA)機内誌「翼の王国」に、ただいま大橋弘一が「洞爺湖ノート」を短期連載中です。

■ 今日ON AIRした音楽
アース、ウィンド&ファイア
・ レッツ・グルーヴ
・ アフター・ザ・ラブ・イズ・ゴーン
・ 宇宙のファンタジー
・ ブギー・ワンダーランド
・ サタディ・ナイト



■ 「不思議いっぱいネイチャーワールド」は札幌のコミュニティーFM局「FMアップル」(76.5MHz)で、毎週火曜日午前11時00分からお送りしている1時間番組です。

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野鳥写真家&自然雑誌faura編集長の大橋弘一が自然や環境について語ります。FMアップルの番組「不思議いっぱいネイチャーワールド」の内容を伝えるブログでしたが、放送休止中の今もこのブログは継続します。